さんさんくど

mikazukiノンフィクション劇場

「さんさんくど」

弟が学校を出て、初めて就職した時のことである。入社するとまず新入社員全員、岐阜の工場で新人研修が始まる。研修期間は独身寮に泊まるのだが、研修後どこに配置されるかは、まだわからない時期であった。

右も左もわからない街での生活。 会社と独身寮との往復以外その土地のことは全く知らなかった。

ある日、彼の上司が
「午後から、下の『さんさんくど』って言う喫茶店で待ってるから、そこで仕事の打ち合わせをしよう」
と弟に言った。

ずいぶん変わった名前の喫茶店やな、と弟は思った。


午後になった。
待ち合わせの喫茶店へ向かう。

言われた坂道をおりていくと、十字路になっている。

どちらを向いても『さんさんくど』という看板は見当たらない。



そのかわり、彼の目に飛び込んできたのは

【サザンクロス】
という看板であった。かーかー

いとおかし。(←趣がある)


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